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千葉地方裁判所 昭和47年(行ウ)10号 判決 1975年10月27日

千葉県船橋市本中山三丁目一三番一号

原告

大平化工株式会社

右代表者清算人

利谷吉長

同県市川市北方一丁目一一番一五号

被告

市川税務署長

右指定代理人

玉田勝也

室岡克忠

神沢明

岡田重三

渡部渡

高梨鉄男

村瀬次郎

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、原告

1. 被告が原告に対して昭和四六年三月三一日付でなした原告の自昭和四四年六月一日至同四五年五月三一日事業年度分法人税の更正決定及び重加算税賦課処分を取消す。

2. 訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告

主文同旨。

第二、当事者の主張

一、請求原因

1. 原告は、非鉄金属精製販売を目的として設立された株式会社である。

2. 原告は、自昭和四四年六月一日至同四五年五月三一日の事業年度(以下、「当期」という。)の法人税について、欠損金額一、三〇二、二九一円として確定申告したところ、被告は原告に対し、昭和四六年三月三一日付をもって、所得金額を金二、六七六、四三四円、法人税額を金七六〇、五〇〇円とする更正決定及び、重加算税金二二八、〇〇〇円の賦課処分(以下、右更正決定及び重加算税賦課処分を併せて、「本件更正決定等」という。)をなした。

3. 原告は、本件更正決定等につき、被告に対し、昭和四六年四月一〇日異議申立をなしたところ、被告は同年六月八日これを棄却する決定をした。そこで、原告は更に、同月二八日、国税不服審判所長に対し審査請求をなしたが、同所長は同年八月八日これが棄却の裁決をなし、右裁決書謄本は同日原告に送達された。

4. しかしながら本件更正決定等は違法であるから、原告は、被告に対し、その取消を求める。

二、請求原因に対する認否及び被告の主張

1. 請求原因に対する認否

請求原因1ないし3の事実は認める。

2. 被告の主張

(一)  (更正決定)

(1) 原告の当期確定申告には、左記明細のとおり、金三、四七八、七二五円の売上除外金額及び、金五〇〇、〇〇〇円の仕入過大計上金額があった。

(売上除外金額)

<省略>

(仕入過大計上額)

<省略>

(2) 前記の売上除外金額及び仕入過大計上金額分を修正して当期損益を計算すれば、当期所得金額は金二、六七六、四三四円に達する(計算式、売上除外金額三、四七八、七二五円+仕入過大計上金額五〇〇、〇〇〇円-原告申告欠損金一、三〇二、二九一円=当期所得金額二、六七六、四三四円)。

(3) 原告の発行済株式総数は二、〇〇〇株であり、このうち、利谷吉長、曽雌精一、及び遠山正の三名か各四〇〇株、合計一、二〇〇株(一〇〇分の六〇)を有している。法人税法二条一〇号によれば、株主の三人以下が有する株式の総数が、その会社の発行済株式の総数の一〇〇分の五〇以上に相当する会社は同族会社であるというのであるから、原告は同族会社に該当する。

(4) 以上から、(イ)前記所得金額に対し、法人税法六六条二項に定める法人税率(一〇〇分の二八)による税額を算出すると共に、(ロ)前記所得金額から別紙本件重加算税額の算式B記載のとおり法定控除額を差引いた留保所得金額に対し、原告は前記(3)のとおり同族会社であるので同法六七条一項に定める同族会社の法人税率(一〇〇分の一〇)によって税額を算出し、右(イ)、(ロ)から、原告に対する法人税額金七六〇、五〇〇円を得ることができる。

そこで、被告は、原告に対し、当期所得金額を、前記のとおり、金二、六七六、四三四円、法人税額を金七六〇、五〇〇円とする更正決定をなしたものである。

(二)  (重加算税賦課処分)

(1) 前記(一)(イ)記載の売上除外金額のうち、有限会社トシノ商会に対する売上代金五六四、八〇二円及び株式会社三和製作所に対する売上代金六七八、六四〇円について、右代金相当額の現金を利谷吉長が受領して、ことさら原告帳簿に記帳せず、右売上収入を隠ぺいし、原告帳簿上現金の現在高が不足したときは、適宜同人からの借入金を計上して辻褄を合わせる方法により取引を仮装して記帳した。

(2) 同様に、滝本貴金属株式会社に対する売上代金一、六三六、五〇二円について、右代金支払のために、同会社が交付した小切手を住友銀行船橋支店の原告名義の普通預金口座に入金したにもかかわらず、これをことさらに原告の帳簿に記載せず、のみならず右預金口座を昭和四四年六月一八日に解約し、同日改めて同支店に原告名義の普通預金口座を設定し、もって右売上収入の隠ぺいを図った。

(3) 同様に、株式会社三和製作所に対する売上代金二七二、〇〇〇円について、右代金支払のために、同会社が交付した小切手を協和銀行秋葉原支店の利谷吉長名義の普通預金口座に入金し、原告の帳簿には、借方預金、貸方借入金として記載して右売上収入を隠ぺいすると共に、同人からの架空の借入金を計上して取引を仮装して記帳した。

(4) 以上のとおり、原告は当期の取引の一部を隠ぺいし、又は仮装していたものであるから、被告に於て国税通則法六八条一項により原告主張のとおりの重加算税賦課処分をしたものである。

(三)  以上の次第であるから、被告が原告に対してなした本件更正決定等は適法である。(なお、被告の調査によれば、原告には、前記(一)(1)のほかに、更に、大平洋金属株式会社からの当期仕入につき、金一、六五七、九八六円の仕入過大計上額があるため、これを勘案すれば、当期所得金額は、最終的には、金四、三三四、四二〇円となる。したがって、被告のなした更正決定等は、右金額の範囲内で適法である。)。

三、被告主張に対する原告の認否及び反論

1. 原告の認否

被告主張(一)(1)は認める。同(三)かっこ書のうち、仕入過大計上の点は否認する。

2. 原告の反論

原告は、当期確定申告中には記載しなかったけれども、実載には、今井商店より、左記のとおり、五回にわたって、合計金三、六八五、〇〇〇円相当の貴金属屑を仕入れ、同金額の代金を支払っているので、右仕入額を原告の損金として計上すべきである。

昭和四四年一二月二七日 金 八五、〇〇〇円

同四五年一月二一日 金一、五〇〇、〇〇〇円

同月二六日 金 八〇〇、〇〇〇円

同月二九日 金 四〇〇、〇〇〇円

同年二月一〇日 金 九〇〇、〇〇〇円

四、原告の反論に対する被告の認否

原告の主張は否認する。

第三、証拠

一、原告

1. 甲第一ないし第七号証

2. 証人今井貞吉

3. 乙第一号証の成立は知らない。同第二号証の成立は認める。

二、被告

1. 乙第一、第二号証

2. 証人永持公司、同忍足礼次郎

3. 甲号各証の成立はいずれも知らない。

理由

一、1. 請求原因1ないし3の事実は当事者間に争いがない。被告主張の(一)の(1)の事実も又、当事者間に争いがない。

2. 原告は、被告に反論して、今井商店より、五回にわたり仕入をなし、その合計金三、六八五、〇〇〇円の仕入金額が、確定申告記載外に存在する旨主張しているところ、甲第一ないし同第七号証は右主張に沿う内容をなしているので、右各書証について検討を加える。

まず、甲第一ないし同第五号証は、証人今井貞吉の証言により、その成立が認められ、これらは、いずれも、今井商店発行の領収証であって、昭和四四年一二月二七日から同四五年二月一〇日まで順次原告主張の仕入代金額及び支払期日に照応する記載内容となっているところ、証人永持公司の証言によれば、同証人は、国税不服審判所に審判官として在職中、原告の審査請求について調査をなしたものであるが、その際、今井商店に促しても、前記各領収証にかかる取引を裏付けるメモ、諸帳簿等の資料は何ら同商店から提出されることなく終ったことが認められること、前記今井貞吉証言によれば、今井商店の原告との取引は、昭和四六年頃から開始されたものであり、それ以前の同四四、五年には、未だ取引はなされていなかったことが認められること、等を勘案すれば、前記各領収証は、真実、原告と今井商店との取引に基いて授受されたものとは認め難く、結局、その記載内容は措信するに足りない。次に、甲第六、同第七号証は、曽雌精一作成の計算書で、ほぼ前記各領収証に符合する内容であるが、本件全証拠によるもその成立の真正なることを認めることができない。また仮にその成立を認めることができたとしても、前叙甲第一ないし同第五号証と同様の理由によりその記載内容を措信することはできない。そして、このほか、原告の前記主張を認めるに足りる証拠はない。

3. 原告の発行済株式総数は二、〇〇〇株であり、このうち、利谷吉長、曽雌精一、及び遠山正の三名が各四〇〇株、合計一、二〇〇株を有していることは、証人忍足礼次郎の証言及び弁論の全趣旨からこれを認めることができ、これによれば、原告は、法人税法二条一〇号にいう同族会社であることが認められる。

4. 別紙本件重加算税額の算式B記載の留保所得金額及び留保控除額は原告の明らかに争わないところである。

5. 以上から、被告の原告に対する更正決定は、法人税法六六条二項、六七条一項等の規定によって適法ということができる。

二、被告主張の(二)の(1)ないし(3)の事実は、前記忍足礼次郎の証言及び弁論の全趣旨により認めることができ、これによれば、被告の原告に対する重加算税賦課処分は、国税通則法六八条一項等の規定により適法ということができる。

三、よって本件更正決定等が違法であることを前提とする原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 木村輝武 裁判官 小松峻 裁判官 福岡右武)

本件重加算税額の算式(国税通則法68条1項)

A<省略>

B<省略>

C<省略>

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